カトレヤの開花生理

カトレヤの開花生理のコントロール 

 

はじめに

 カトレヤ大輪系の切り花生産は長年に渡り行われてきたが、その消費の形態も春秋中心のブライダル需要から葬儀需要へと変わり、年間の消費量も安定してきた。そのため市場での価格変動は生産の増減によって引き起こされている。

 カトレヤ生産においての開化調節は、有利な販売を行うために、極めて戦略的な技術である。カトレヤは季節毎に開花する品種が有り、開花調節の必要性が薄いのではないかと思われがちだが、実際に栽培してみると、花持ちや採花量の点で品種間の格差が大きい。冬から春咲きの品種に営利性の高い物が多く、夏から秋咲きの品種には花持ちが悪い物が多い。

 また夏から秋咲きの品種は梅雨時の天気や夏の気温などに影響され、年によって開花時期が大きく変動する。したがって、冬から春咲きの品種を開化調節して5~10月の出荷を確保するのが得策と思われる。私の栽培経験から考えられるカトレヤの開花生理とコントロールの方法について書いて見た。

 

カトレヤの花芽分化と休眠期間

 カトレヤの開花期は花芽分化の感度と休眠期間の違いによって決定される。 一番感度がよく休眠期間の短い物は不定期咲きや夏咲種でバルブが充実するとすぐ開花してしまう。そのため開花コントロールが難しい。


 秋から春咲きの多くの品種の花芽分化は8月下旬から9月頃の日長下でほぼ同時期に始まるが、休眠期間の品種間格差によって開花期が決定する。自然開花で秋咲き(10月下旬から11月)の品種は花芽分化してから1.5~2.5ケ月で開花するが、冬咲き(12月から2月)の品種は3から4ケ月、春咲き(3月から4月)の品種は5.6~6.5ケ月の休眠期間を経て開花する。

 

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低温が花芽分化に与える影響

 温度も花芽分化と休眠期間に大きな影響を与える。低温で栽培されると開花は促進され、高温では抑制される。特に休眠期間の短い品種(夏から秋咲種)ほど日長より温度の影響が大きい。

 秋咲き品種をクーラー室に入れ低温(昼間24~25℃、夜間16~17℃)で管理すると、長日の期間でも花芽分化し開花期を早める事ができる。また、4月咲きのアイリンフィニーを霜が降りる直前まで戸外で栽培して低温にあててから、温室に入れると1月下旬~2月に開花させる事ができる。

 
花芽分化後の日照時間が休眠期間に与える影響

 花芽の休眠期間は日数ではなく、日照時間の積算によって決定されている。花芽分化後、電照して日照時間を延ばしてやると開花期が早くなる、電照している期間の長い物ほど促進し、短い物ほど自然開花に近くなる。


 さらに、秋(10月頃)に花芽分化抑制の電照を止めた物より、春先(2月頃)日照が長くなってから止めた物の方が、開花までの休眠期間が短くなる。また、シェードにより花芽分化した株も、シェードを長く掛け過ぎると、かえって開花までに長い期間を要する。以上の経験から、日照の積算時間が多いほど休眠期間を短くすることがわかる。

 
品種間の開花特性は原種の構成比率で決まる

 品種間の開花特性は、育種過程での原種の構成比率を見ればおおよその予測がつく。 休眠期間の短い夏咲種は、ワーセウィチやドウイアナの血を多く受け継ぎ、秋咲きはラビアタやルデマニアナ、冬咲きはトリアネー、春咲きはモッシェやメンデリー、レリヤのパープラターの血を多く受け継いでいる。もし、開花期の違う原種が複数含まれる場合、その原種の開花期を平均した時期に開花する。

 
 昔は、分厚いサンダースリストを調べるのに大変な時間が掛かったが、現在では、全ての交配データをCDに収めたパソコン用のソフト(ワイルドキャット)があり、簡単に交配親を検索したり、原種の構成比率を数値化することができる。 カトレヤの花芽分化と開花の特性を理解すれば、営利性の高い品種だけを選んで周年安定した生産が可能となる。具体的なコントロールに付いては次回で紹介したい。

 
 
 
 
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