カトレヤの春先品種の開花コントロール

カトレヤの春咲き品種の開花コントロール 

はじめに

 大輪系カトレヤの生産において、営利性の高い品種の選定が重要なポイントであり、冬から春咲きの品種に営利性の高い品種が多く、それらの品種を春から秋に出荷することが品質を維持し安定した生産をするうえで不可欠であると、前号で書いたが、今回は具体的に春咲き品種の開花コントロール技術についてお話したい。

 私の農場では、電照による花芽分化の抑制、電照による休眠期間の短縮、シェードや冷房による花芽分化などの方法を行っている。今回は電照による開花の抑制と促進について書いてみた。

 

春咲き品種の電照による開花抑制

 春咲き種の開花をコントロールする方法はいくつかあるが、電照による方法が一番多く行われている。夜間電照することで日照時間を延ばし花芽分化を抑制する。

 具体的には8月末頃から電照(暗期を7時間前後にするか、3~4時間の夜間中断)を開始し開花希望時期から逆算して、電照を停止して行く。電照を停止するだけで花芽分化が可能な期間は3月初めまである、それ以降は日照時間が長くなるため電照を止めても花芽分化は起こらない。

 

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 春咲き品種(アイリンフィニーやアイリンホールギン)を3月始めまで電照した場合、開花するのは8月中旬である。安定した出荷を望むなら、10月始めから3月始めまでの間、順次電照を止めて行くと5月から8月まで出荷が可能である。 しかし、一定の間隔で止めていくと、休眠期間が日照時間の積算によって影響されることから、初期に電照を停止した株は、秋の短日の期間を通過するため開花が遅れる。 後半の春になってから電照を切った株は、長日になるため、休眠期間が短縮されて早く開花する。したがって、コンスタントな出荷をするには、電照を切る間隔を最初は短く、後になるほど長く取る必要がある。 具体的には、最初の停止間隔を徐々に延ばしていき最後の間隔は最初に比べ4~5割り程度、長い間隔をとる必要がある。

 

 私の所では、電球の上部内側が銀色に塗装された電照専用の40Wのものを使い、カトレヤの葉上30~40㎝の所に吊している、あまり高く吊すと隣のベンチに影響を与えてしまうからである。180㎝幅のベンチに奥行き方向に180㎝間隔で電球を吊しているが、これは遮蔽幕を使わずにベンチ単位で処理できる間隔である。電照する時間帯は生産者によって夜間中断と昼延長(夕方から点灯)とに分れる。

 エネルギー効率を考えれば夜間中断が良いと思うが、カトレヤがCAM植物であると言う事を考えれば、昼延長の方が暗期を長く取れるので炭酸ガスの吸収を妨げないのではないかと思われる、どちらもカトレヤの生育に具体的な問題は起きていないようだ。

 

 注意点として一度、電照により抑制した株はバルブの完成周期が変わってしまうため、毎年同時期に開花させるのが良い、バルブの充実度によって花芽分化の感度が違って来るからである。 また、開花後、新芽が動き始めたら長日の期間であっても、すぐに電照を開始しないと狂い咲き(早期開花)の原因になる

 

電照による春咲き品種の開花促進

 冬咲品種(ドラムビートなど)が咲き終り、春咲き品種(アイリンホールギン、アイリンフィニーなど)が開花するまでの僅かな間、出荷が減少することがよくある。 そこで、春咲き品種を開花促進して2~3月に開花させる必要がある。

 

 春咲き品種の花芽の休眠期間は日照時間の積算によって決まるため、花芽分化が完了した11月頃から抑制と同じような方法で電照を開始すると、休眠期間が短縮されて4月上旬開花のものを2月下旬に開花させる事ができる。

 

 自然開花まで一定量を開花させるには、11月から1月下旬でまでの間、順次(7から10日間隔で)電照面積を増やして行くと、自然開花までの間、安定した出荷が可能となる。カトレヤは日照時間だけでなく温度の影響も受ける、低温では開花が早まり、高温では遅れる。したがって、室温を自然開花(無処理区)の温室と同じ条件を設定しておかないと安定した継続出荷は望むことはできない。

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