環境制御の自動化 前編

胡蝶蘭栽培での環境制御の自動化 前編

パソコンをつかった制御ロジックの考え方

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はじめに

 ファレノプシス(胡蝶蘭)経営の規模拡大と品質向上を両立させる上で、システム化とマニュアル化は避けて通れない問題であり、特に栽培技術をマニュアル化する事は重要でる。

ファレノの栽培技術の中では、温室内の空間の環境(温度、光、湿度、等)がどのように維持されているかが、花の品質と開花期を決定する上で大変に重要な要素となる。 温室内の機器制御を数値化、マニュアル化するにはパソコンを使ったシステム開発が有効な手段となる。

しかし、現在市販されている環境制御機には、ファレノ栽培に適した機器制御論理(ロジック)を持つ環境制御機は少なく、生産者の独自の栽培技術を数値化しロジックを開発しなければならない。

 

ファレノ栽培での制御ロジック

ファレノ栽培の場合クーラーや複数枚の遮光など、他の植物には見られない特殊な機器制御が必要で、既成のプログラムでは、うまく制御出来ない事が多い。

私の農場では㈱ESDのグリーンキットを使い十数年に渡ってファレノ栽培に適した温室制御ロジックを開発してきた。
グリーンキットはDL300というソフトの設定上で生産者の機器制御技術を独自のロジックとして展開することができるため、栽培現場からのアイディアを取り入れた機器制御が可能になる。

私の農場で思い付いた幾つかの制御ロジックをこれから紹介したい

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ハウス外観

保温カーテンの制御ロジック 

ファレノ栽培では、高温と低温の環境を周年に渡り作り出す必要があり、暖房や冷房に大変多くのエネルギーを消費するが、それらを節約するのがカーテンである。 気象条件や成育ステージ、省エネの要求度により、複雑なロジックが要求される。保温用カーテンには2種類ある。光を通さない物(シルバー)と光を通しながら保温する(ポリエチレン系)物がある。

シルバーカーテン

シルバーカーテンは日射量と外気温での制御が最適で、ロジックは単純でよい。
*目標の日射量以上で開、それ以下で閉、また15分平均外気温が目標温度以上では開でである

ポリエチレン系透明カーテン

透明カーテン(ポリエチレン系)は最も複雑な条件によって制御する必要がある。

多くの複合環境制御器は室温によって制御されている物が多いが、暖房負荷に一番大きな影響を与えるのは日射で次に外気温である、さらに非常時の事を考えれば、室温も考慮しなければならない、つまり、室温が変化する前に暖房負荷を考えて制御されなければ、省エネと採光、という相反する条件を微妙な判断で使い分ける生産者の要求を満たす事はできない。

 

*開の条件は、日射が目標日射より明るくなり暖房負荷が小さくなった時、かつ室温が適正温度(暖房設定温度-1℃)以上である時に開ける。また室温が上限温度(暖房設定温度+3℃)以上に達した時は非常時と見なし開けなければならない。

 

*外気温が暖房目標温度近くまで上昇した時には、カーテンで保温する意味がなくなり、換気と採光を確保を優先させるために開ける。*閉の条件は、日射が目標日射を下回り、かつ室温が適正温度(暖房設定温度+1℃)以下である時に閉める

 

*室温が暖房目標温度を大きく下回った時(暖房設定温度-1.5℃)は、非常時と見なし閉めなければならない。

 

*カーテン開閉の基準となる目標日射量は、外気温によって変化させる必要がある。真冬と春の最適なカーテン目標日射量の変化量から外気温カーテン係数を設定して、暖房目標温度と外気温の差に掛ける、その積を設定目標日射にプラスして補正することで、暖房負荷に比例したカーテンの動きが実現できる。

ファレノの場合は他の植物より室内温度が高いためカーテンの動きとボイラーの動きが一致しないと省エネと日射の確保を両立できない。

外気温変化による補正式 外気温カーテン係数X(暖房目標温度-15分平均外気温)+設定目標日射=カーテン目標日射以上のように考えている。

 

冷房時のカーテン制御  

ファレノの開花室では夏場に冷房を行うが、カーテンの冷房時の制御は暖房時の制御と逆の論理が必要で、他の植物の栽培温室にはない、独特の制御ロジックが要求される。
冷房、カーテン、天窓の三つの機器をカーテン外温度(カーテンと天窓の間)、日射量、外気温のデータを参考にして関連制御しなければならない。

 

*冷房時カーテン「閉」の条件

冷房機の負荷は日射量によって大きな影響を受けるため、日射が目標日射量を上回った場合に閉、そしてカーテン外気温が目標温度以上で天窓を開ける。夜になったら再び保温を優先して、全てのカーテンを閉める。 

 

*冷房時のカーテン「開」の条件

日射が目標日射量を下回った時、かつ、カーテン外気温が目標温度以下に下がり天窓がしまっているとき、冷房負荷は小さくなるのでカーテンを開け採光を確保する。また、室温が異常に上昇した時も、冷房機の故障と見なしカーテンを開放しなければならない 

 

*カーテンの目標日射量は外気温の変化によって変化させる必要がある。暖房時と同じように、係数を設定して、冷房目標温度と外気温との差を掛けて、その積を設定目標日射にプラスして補正することで、冷房負荷に合わせたカーテンの動きが実現できる。

 

 

 

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