環境制御の自動化 後編

胡蝶蘭栽培での環境制御の自動化 後編

 

パソコンを使った環境制御の自動化 

室温(冷房、暖房)の制御

 冷暖房機の温度設定は普通、時間帯ごとに暖房、冷房目標温度を設定する程度のだが、ファレノ栽培の場合、温度管理によって花芽分化や開花スピードが大きな影響を受ける。周年に渡り温度管理をしていくと、初夏の暖房から冷房への切替え時には、開花の促進や花芽が出ない等のトラブルがある。秋の切替え時では室温低下による、開花の遅れで、年末出荷の品不足などが起こる。

 関東では4月末から5月と秋10月頃に一日の内、冷房と暖房の両方を使う事がある。目標の室内温度を冷房に合わせるのか暖房に合わせるのかによって2℃くらいの差ができてしまう。冷房と暖房を同時に使う場合、2℃以上の温度巾を持たせないと、同時運転してしまう心配があるからだ。
 春先の天候は変わりやすいため、理想の室温を維持する為には、暖房のどちらに目標設定温度を合わせるのかが大きな問題となり、外気象の変化に対応して冷暖房の設定温度を補正する必要がある。

*春先、外気温が補正開始目標温度を超えた時、暖房目標温度を2℃下げ、冷房目標温度を1℃下げる。
*秋、外気温が補正開始目標温度を下回ったら、暖房目標温度を1℃上げ、冷房目標温度を2℃上げる。

こうした温度補正を行う事で、外気温が変化しても、室温を一定に保ち、冷暖房機の同時運転によるエネルギーの無駄を無くす事ができる。

 

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積算温度による温度管理

ファレノ栽培の温度管理では一定の数値を設定しても外気象の影響を受けて室温を同じように維持する事が難しく、成育スピード、花芽分化、開花スピード、花質等が大きく影響される。ファレノ栽培での適温は単純に最高温度と最低温度だけではあらわすことができない。

最近パソコン上で15分毎の室温を24時間集積してみた。通常の開花室の一日の積算は2000から2100℃位であった。

 高温室(大苗室)は2700から2800℃であった。花芽分化には高温室と開花室の室内温度差700℃前後が必要でこの差が少なくなると、花芽分化がし難くなって来る。また、開花室の積算温度が100℃前後高いと、低温処理から開花までの期間が2週間前後早くなり、逆に100℃低いと2週間前後遅れてしまう。

 これらの経験から、瞬時の温度データだけでなく積算温度も併用して室温を監視する事で、花芽分化や開花時期、花質の変化を予測する事ができる。

また、冷暖房の切替時期や外気象の変動に対する設定値の補正のタイミングを推しはかる事ができる。将来は積算温度のデーターを直接、制御に反映させるようなロジックも考えてみたい。

 

 

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外部センサー
写真の外部センサーは温度、日射、雨等のデーターを計測しコンピューターに送る
 

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カーテンが作動している温室内の様子

 

生産者自身によるシステム開発の重要性

洋蘭生産がIT時代を迎えるには、経営を取り巻くあらゆる部分で、独自のシステム開発が必要である。大きな企業の場合、SE(システムエンジニア)を養成して独自のシステムを開発していくが、農家にはその資金的な余裕はない。
 しかし、既成のシステムでは全ての作物や経営に満足できる物はない、農業の現場の技術は机の上では開発できないからである。

 少ない投資でシステム開発をするには、自らがパソコンに精通するか、機器メーカーとタイアップして開発するかである。どちらにしても、その為には、生産者は日々の仕事を常に頭の中で、マニュアル化し論理付けをしておかなければならない。

私の場合も、プログラムを書くほどの知識はなく、㈱ESDのハード、ソフトの協力を頂きファレノ栽培に適した制御を実現できた。事務処理(販売管理、仕入管理、財務管理)についても同様で、特に販売管理については、花を市場で販売する為に開発されたソフトは少ない、市場売りは独特の処理体系が必要で市販の商業用ではうまく処理できない、その理由は。
*委託販売であり出荷した後から価格が決定されるため、送り状と仕切り書の照合、訂正が必要になる。
*売り上げの中から各種手数料を差し引く必要がある。
*一枚の納品書の中に競り売りと予約相対売りが混在しデーターを識別しないと市況の検索できない
*支払いが仕切り書単位で行われ、締め日の概念がなく、任意の期間での請求、入金が行われる。
*素早く市況を検索し、市場毎に比較して販売戦略を考えなければならない。

などなど、独特の処理体系をプログラムしなければならない。

そこで私は1987年から園芸農家向け販売管理ソフト”フルーレ”の開発を友人の力を借りて始めた

現在はその友人を社長として農家3名で経営する㈱オーキットシステムにより農業の現場からシステム開発を続けている。

 

 

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